裏庭の野良猫母子 その11「その後」

野良猫騒動後あまりの緊張感と疲れでしばらく腑抜けてしまい、やっとゆきちゃんをなくした打撃から立ち直りかけていたのに、ほんの些細なことからめそめそするように戻ってしまった。それでもまた、毎日の一喜一憂に少しずつだがなじんでいく。

そんなある日、ネットで猫のおもちゃ(もちろん2月に来る仔猫用だ)を探していた時、偶然"Cat Alliance of Australia"という同盟団体を発見した。ここで、初めて西オーストラリアにも"No Kill Shelter"があることに気づく。
Cat Havenは西オーストラリア最大のシェルターだが、殺処分は実践されている。だが、他のいくつもの小さなシェルターが殺処分に反対し、保護家庭ボランティアと連携して猫救済を実践していたのだった。このCAAはそうした動きを統合し、同盟として数々の催しやパンフレット作成などにかかわっているのだ。先にわたしを歯ぎしりさせた「TNR(捕獲/避妊・去勢/解放)の不在」を問題視し、各国との情報交換なども行ってその将来性と可能性をも発信している。

もっと早くここのことを知っていれば、Cat Havenに猫母子を涙ながらに持ち込むこともなかった。またわたしの無知のせいだが、そうした情報が手の届くところにないのも問題だ。もちろん、Cat Havenにはそのパンフレットすらない。

さっそくPayPalを使って寄付をし、大変だった野良猫騒動についても簡単に記した。そして、この寄付がわたしの野良猫母子たちに対する贖罪の一種だともつけ加えた。

次の日、Cat Alliance of Australiaのプレジデントからメールが届いた。

寄付をありがとうございました。そして、キャットヘヴンでの悲しい経験を知りとてもお気の毒に思っています。わたしたちはあなたのようなひとからの電話を毎日最低でも4回ほど受け取ります。それほど頻繁に起こっているのです。そういうひとたちには、殺処分のあるシェルターを避けるようにサポートも続けているのです。ご存じのように、オーストラリアでは毎年13000頭の猫、そして33000頭の犬が是非を問われることなく殺処分されています。彼らを全て救済するために必要なのは、去勢と避妊の大量簡易手術でしかないとわたしたちは考えます。来年2月には大きな催しがオーストラリアの各州で開催されることになっており、その時にもう一歩前に進むことができると望んでいます。「殺処分なし」は、大量にしかも低コストで手術できるクリニックが増えれば、近い将来不可能ではないとわたしたちは信じています。その時には、人々は何故もっと早くやっていなかったのか、と不思議がることでしょうね。猫を保護し里親を探すことはもちろん崇高な行為ですし、人々の心を安らかにします。現状では彼らの愛情にたよるしか術のない猫たちも沢山います。しかし、CAAにとってはそれだけでは充分ではないのです。わたしたちの心が安らかになるのは、各地の猫シェルターが空になる時だからです。殺すために存在しているような、かわいそうな仔猫たちがこれ以上生まれてこないようにするべきだからです。もう1度、寄付をくださったことに感謝いたします。クリスティーン・ユーロヴィッチ、CAA プレジデント


世の中はわたしの知らないことだらけだ。ゆきちゃんと一緒に住んでいたときには、このような問題やそれを解決するために奔走する団体が存在することすら考えてもみなかった。

今もまだ胸に痛みを覚えるけれども、わたしはあの日以来Cat Heavenに電話をかけてはいない。仔猫たちは里親が見つかって、平和な生活をしているかもしれない。母猫は殺処分を逃れて、保護家庭で再生への道をたどっているかもしれない。それは、わたしにはわからない。そして、それを知ってもわたしにはすでにもうどうすることもできない。わたしにできるだけのことをしたのだ。それでいいじゃないか、と思うようにしている。

忘れられないクロシロ

あの野良猫母子のような境遇の猫たちは今も世界中の至る所にいるわけだし、それを救済しようと私財と時間を投げ打ってやまないひとたちも至る所にいる。
ネットでは、様々な猫に関する文章にも出会う。そして、捕獲をしたときに感じた「孤独な責任感の重さ」を実は共有していたひとたち、猫を家族の一員として愛情を持って一生世話をし続けるひとたち、喪失の悲しみにこらえきれずに涙をこぼすひとたち、猫と暮らすことによって単純に愛情と信頼を分かち合う喜びを見いだしたひとたちが、実は沢山いたことにも気づく。
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